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「忘己利多」と「志事(しごと)」

2024.04.30他問自答(問題提起とLDNの考え)|

広告業界には「一業種一社制」という不文律があると言われています。

広告を扱う以上、クライアントの企業秘密を知ることにもなり、競合他社を扱うことがモラルとしてよくないというのが、良識ある業界の慣習だったと言えるかもしれません。

人口増加、市場拡大の経済成長時代ならそれで良かったのかもしれませんが、今は前提条件が大きく様変わりしました。

ところが、地域に関わる自社で言えば、むしろ逆。特に伝統工芸や伝統産業を扱う場合、地域の基幹産業になっている場合も多く、その業種の存続が地域の生き残りに直結することも少なくありません。
短期的な視野で、民業の利益だけを考えるならそれでいいのかもしれませんが、ただでさえマーケットが縮小し、放置すればジリ貧まっしぐら。その技術やその周辺に伴う文化まで絶滅危惧種になりかねない状況にあります。

具体的には、茶業のような農産物の産地もそうだし、藍染のような地場産業も、地域とは切っても切り離せない、独自の発展をしてきた必然と歴史を持っているのが普通です。
こと老舗企業のブランディングを考える場合は、「企業の歴史≒地域の歴史」と重なることが多く、【ローカルデザイン】を形成してきた場合が

ほとんど。まさに、その企業と地域、それぞれの歴史が不可分な状態です。

だからこそ、地域に関わる者にとって、真っ先に考えねばならないのは、

「皆を活かす道は本当にないのか?」

ということ。

その解を見い出すことができなければ、その産業どころか、地域全体が没落していく。。。

ふつうならその企業が発展するなら良さそうなものですが、一社が独り勝ちしても、その業種全体が衰退すれば、マーケットが縮小し、巡り巡って結局は自

分の首を締めるような結果を招くことになりかねない。

そのような最悪の状況を回避するためにも、【皆を活かす戦略】が大前提。

藍染めの染料となる藍玉の製造販売などを営む豪農の生まれだった渋沢栄一は、藍玉製造者から仕入れる藍玉の品質を調査し、相撲番付をまねて「今年の藍作りの大関、関脇、小結、前頭」などとランク付けする「藍玉の番付表」を示すことで、互いに切磋琢磨する状況をつくり、適度な競争と緊張感を演出することで、業界全体の発展を牽引しました。

時代背景が違うので、同じようなことはできませんが、
「互いに響き、奏で合うような良い意味での競争」=【響奏】と名づけ、この考え方を自社の行動指針といています。
人口は減少しても、地場産業が生き残る道を必死になって探り出す。
そして、この行動指針こそが、最終的には己を活かすことに繋がる。そのような信念と矜持を持って、日々仕事に取り組んでいます。

私事でもなく、単なる仕事でもない、
志のある仕事。まさに志事と呼べるような働きをして生きたいと思います。

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